• テキストサイズ

咫尺天涯 ―遠い恋―【保科宗四郎】

第1章 泡の飛沫


ご飯を食べ終えてソファで休む副隊長の背中を見つめながら、後片付けをする。これが終わったらお風呂を沸かして、"あのこと"を話そう。期待はしていないけど、さすがに今回のことは改めて欲しい。副隊長として。

そろそろ片付けが終わろうとしている頃、副隊長が立って「風呂沸かしてくる」と、リビングを出て行った。別に分担しているわけではないけど、彼はある程度、家事をしてくれる。副隊長が先に帰ったら、ご飯も作ってくれる。

あの人の中に私の存在はちゃんとあるのだとわかるけど、それ以上でも以下でもない。

「一緒に入りたい?別がええ?」

「別でいいです。……あの、少し話があるんですが、いいですか?」

「別がええんか……話?ええよ」

お風呂を沸かして戻ってきた副隊長をソファに座らせた。「なに?」と股に手を置いて、身を乗り出している。こういう仕草って…可愛いと思うのは私だけ?

「噂が立ってるのは知ってますか?立川の女性隊員がほとんど、副隊長の"竿姉妹"だって…」

「あぁ、あれか……ほんまかどうかもわからんのに、噂流すん好きやな、みんな…。ほんで?妬いてるん?」

悪びれる様子もなく、首を傾げてこちらを見る。何故そうなる……私がいちいち妬いてるからって、こんな話を切り出すわけもない。いつものことじゃない。

「いえ。あなたの立場があるので、隊員は控えてください。降格……除隊も有り得ますよ」

「大丈夫やって。ちゃんと選んどるし」

だからどうしたと言うのだ。大丈夫なわけがない。既に噂は広まっているのだ。風紀の話にもなる。

「隊員なら病気持ちかどうかもわかるし、いつも自前のゴム使っとる。そんな心配せんで」

私が言いたいことが伝わっていない。いや、それより……ゴムを使ってる?私にはいつも使わないくせに?私のことはどうでもいいの?妊娠したらどうするつもりなのだろう。この人が結婚するとは思えない。だけど…私はそれを望んでいる。この人を離さなくて済むから。

目を逸らして、溜め息をつく。恋人同士の会話とは思えない。少しずつ、空気がピリついていった。
/ 80ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp