第1章 泡の飛沫
少し残業をしてから帰路を辿る。今日は…たぶん帰ってくる。出掛けると昼頃に連絡があった。昨日一昨日と女を抱いたのだ、自主トレでもしていたのだろう。
副隊長のご飯を作って、自分のは昨日の物を温めた。玄関から音がして、少し髪を整えてから出迎える。私の見た目など、気にしていないことはわかっているのに、少しでも意識して欲しいと思っているのだろう。自分のことなのにわからない。
「おかえりなさい」
「ん。めっちゃ腹減ったぁ……今日なに?」
"ただいま"なんてない。この人は、私がいる場所を帰るところなんて思っていない。
「唐揚げとツナサラダ、豚汁と炊き込みご飯です」
「ははっ、毎回めっちゃ作ってくれるやん。そんな時間ある?」
私の肩を抱き、少し髪を撫でてからリビングに向かう。なんでこんなに頑張ってるか、あなたにはどうでもいいことなんでしょう?どうして付き合っているのか、同棲しているのか、わからなくなる。
それでもこの立場を守れるなら全部飲み込んで、笑ってあげる。面倒臭い女にはならない。副隊長の背中を追いかけて、ご飯を盛り付けた。
「美味い」と言いながら食べてくれる副隊長に笑みが零れる。それだけで私は幸せ……だから、これ以上は求めない。期待なんてしていない。この人が私を見ることなんてないのだから。