第5章 愛を執り、染まる
「……寮の消灯時間や。出雲といたそうやな。はぁ……僕が悪いんやろな」
リビングに入ると、ソファで俯いていた宗四郎が、溜め息とも言えない、苦しさを吐き出すような呼吸をしながら背凭れに頭を預ける。そんな彼に首を傾げる。宗一郎さんとしたわけではないんだけど…。
「…た、ただいま」
「ん、おかえり。来て」
ソファを2回ほど叩き、私を呼ぶ。その声色からは感情を読めない。どうしたのだろうと思い、大人しく隣に座る。
その瞬間、きつく抱き締められて、息を忘れる。私の肩に顔を埋めて、震えた呼吸を繰り返す宗四郎。指が肩に食い込んで、少し痛かった。
「……"軽い好きでいろ"言うたけど、やっぱ嫌やわぁ…僕だけ重いんはやや……乃愛、ややぁ……僕があかんのわかっとるけど、嫌なんや…」
息を呑むほど弱々しく、泣いているのではないかと思うほど、震えている宗四郎の声。好きな人をこんな風に苦しめたいわけじゃないけど、私だって苦しいんだ。どうして自分の時だけ、そんな風に我儘を言うの?
ただ黙って、腕が離れるのを待っていた。何か口にしたら、宗四郎を責める言葉ばかり出てきそうだったから。自分のをしっかり精算してから、そんなことを言って欲しい。
でも、もう隊員とはしない。宗四郎みたいにあんな噂が立つのは嫌だ。宗四郎を注意した手前、これ以上は出来るはずがない。今日はただ…宗四郎が音芽とあんな風にしていたのがいけない。
自分の間違った行動を人のせいにして、正当化しようとしていた。未だに抱き締めたままの宗四郎の腕の温かさを感じながら、身体の奥から冷えていく。
「遊んだらええ言うたけど、もうあかん。遊ばんで……相手の男、殺したなる」
「……私だって…私だってそうだよ。宗四郎ばっか傷付いてるみたいな言い方しないで!」
我慢し切れずに言葉の刃が溢れていく。
「私だってずっと…宗四郎とした女に、殺したいくらい妬いてる!それでもずっと我慢してきた!いつかは宗四郎が私だけを見てくれる、私だけを求めてくれるって、信じてたからっ!」
悲鳴にも似た叫びが部屋に響いて、宗四郎の肩を濡らした。限界が来たから他と寝ただけ、それだけのこと。でも、満たされないのは――あなたのせい。