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咫尺天涯 ―遠い恋―【保科宗四郎】

第5章 愛を執り、染まる


年が明け、新しい年度を迎えた。最近は大怪獣や識別クラスまで現れる始末。忙しい私たちは触れ合いが減り、コソコソと口元を隠されることもなくなってきた。

宗四郎に書類を渡そうと執務室を訪ねる。音芽がいて、何か話しているようだった。入り口で声をかけると、「ええで」と手招きされたので、頭を下げて入っていく。

話しているふたりを見ていると、なんだかよくわからない違和感を抱く。お互いの目線、声の温度、少し震えて湿度を持った雰囲気……私との触れ合いが減ったのはそういことか。

バンッと書類を机に置き、驚く二人を尻目に逃げる。音芽だけはどうしても、癪に障る。私と似ているのに似ていない、私がないものを音芽は持っている。

宗四郎と宗一郎さんもそうなのだろうか……いつも劣等感に苛まされて、そんな人を相手にしているのが腹立たしい。どっちもどっちな私たち。

「なんで怒っとるん?なんかあったん?」

「怒っていませんので、お気になさらず」

「いや、怒っとるやん。なんや、嫌なことでもあったん?」

少し振り向き、笑顔を見せて執務室を後にする。廊下を歩いていると新人の出雲ハルイチの姿を見付け、その腕に絡みついた。

「え、宇侍見さん…?」

「乃愛でいいよ♡……ねぇ、今日ハルイチくん、暇ぁ??」

自分でも吐き気がするほど甘えた声。さすがにやりすぎただろうか……断られる?

もう、何もかも壊れてしまえ。既に壊れているのだ、全壊するまでにそう時間はかからないだろう。

「え…誘われてるのかな、俺……」

「うん」と頷き、肩に手をついて背伸びをする。少し屈んだハルイチくんを見て、もっと近付いた。胸がハルイチくんの腕で形を変える。

「……男の人が喜ぶこと、教えて欲しいな♡」

耳元で囁き、頬に口付ける。色んなこと覚えたら、宗四郎は私に溺れてくれる?壊そうとしているのに、あなたを繋ぎ止める術をずっと探している。
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