第4章 過ぐる追憶の反芻
「ありがとう」
ホテルに向かう電車の中、愛しい温もりに身を寄せた。なかなか火の着かない燐を擦るような恋を、手首が痛くなるほど続けている。あなたの手が火花を散らして、それでも燃え上がることはない。
撫でられた髪がほんの少し帯電して、その手に張り付くように、私の身体は離れない。あなたの熱は、いつになったら烈火のように燃え上がるのだろう。
「当たり前や。君はなんでいつも、我慢するん?言いたいこと全部、僕にぶつけりゃええのに」
「ぶつけても……何か変わるの?」
宗四郎は一瞬目を見開き、眉間に皺を寄せた。私の言葉は研ぎ澄まされた刃物のようだった。ぶつけるのではなく、刺していた。
宗四郎はバツが悪そうに顔を逸らして、どこかを見つめていた。そうやってあなたは逃げる。いつもはあんなにも鋭い狐のようなのに、こういう時は兎のように震える。
「ごめんなさい」
私の震える声もきっと、あなたを刺しているのだろう。それでも、私の腰を抱いた宗四郎の手だけは、しっかり私を離さなかった。