第4章 過ぐる追憶の反芻
とうとう宗四郎のご実家に出向く日になってしまった。宗四郎はどうやら、今は私以外と身体を重ねることはしていないようだった。
苦しさに喘ぎ、息すら出来なくなるような……そんなものは、宗四郎にしか感じられない。だから、宗四郎のご両親に何を言われても平気なはずだった。
「なんで謝らなあかんの。宗四郎がちゃんとした子を選ばんから、私が振り落としてあげとるんや。ここに連れて来る言うことは、そういうことなんやろ?」
宗四郎のお母様の言葉は私の心を抉り、この人の隣では生きていけないんだと、事実を突きつけられる。私はこの人と戦う痛みも、命を削る痛みも、分かち合えない。
「なぁ、なんで僕が隊員続けてるかわかっとる?刀は通用しないからと、近い将来命を落とすからと、そう言われて刃向かってるわけやない。僕がしたいからや」
「乃愛も同じや」と真っ直ぐお母様の目を見ていた。いつもの飄々とした胡散臭い笑顔はなりを潜め、自分の信念を貫く、私の好きな男の顔をしている。
「私の気持ちは、この前訪ねた時と変わりません。この恋が終わるのは――どちらか…いいえ。私が死んだ時です」
例え宗四郎がいなくなったとしても、私はずっと、宗四郎の亡霊を見つめているのだろう。だから私はそうならないように、日々必死に、言葉を紡いでいる。
苦しくても手放せないのだから、他の何かを犠牲にして、この場所に立っていないといけない。例えそれが私の心だとしても…抉られてすり減り、残り僅かとなったとしても、私はここに立っている。
「乃愛がいなかったら、僕はとっくに死んでたかもしれん。もっとぎょうさん人が死んでたかもしれん。……謝りや。乃愛はそないなこと言われてええ子やない」
お母様は悔しげに顔を歪ませ、頭を下げた。別に謝って欲しかったわけではないけど、宗四郎が私の為にしてくれたこと。何も言わずに受け入れた。感謝の温かさを胸に宿して。