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咫尺天涯 ―遠い恋―【保科宗四郎】

第1章 泡の飛沫


びしょびしょになった服を絞って洗濯機に入れようと、洗濯機の扉を開けた。中に副隊長が着ていた隊服が入っている。ぎゅっと拳を握ってから、上着を手にした。

バレないよね…?上着を抱えたまま脱衣所を出て、リビングから漏れる光を横目に、自身の寝室に入る。もう少し、一緒にいたかったな…。

布団に潜り込んで、副隊長の上着を抱き締める。これが本物だったら……そんな自分が惨めで、結局、すぐに上着を洗濯機に戻しに行った。

本物を抱き締めたら、惨めなんて思わないんじゃないだろうか。明かりが漏れるリビングの扉を開け、ソファでキーボードを叩く副隊長の背中を見つめる。お酒を飲んできた夜中にまだ仕事をしてるの?

「副隊長……」

私が名前で呼ぶと、普段間違えるだろと怒られる。ほら、こういうのでもっと距離を感じるの。抱き締めに来たのに仕事をしてるんじゃ、邪魔だと怒られてしまうだろう。

「眠れんくなった?ほな、一緒に飲もか?飲み足りんねん」

パソコンを閉じた副隊長はビールの缶を翳して、少し揺らす。「はい」と答えて、冷蔵庫から冷えたビールを取り出し、ソファの前の床に座った。

すると副隊長は私の肩に腕を置いて、隣に降りてきた。どうしたのだろうと見つめると見つめ返されて、戸惑ってしまう。心臓暴れてる。だけど、余裕な彼に劣らないように、必死に平静を装った。

「…なんですか?」

「ちょお、黙れ。……口開いとったら、舌入れるで」

訳がわからずに首を傾げる。次の瞬間には副隊長の整った顔が視界いっぱいに広がって、薄く開いた瞼から赤紫の瞳が現れる。重なった唇が熱い……視線が交わった瞳から逃げるように、ぎゅっと目を瞑った。

キスなんて……何度もしてきたはずなのに、毎回恥ずかしくて、どうしたらいいかわからなくなる。副隊長は鼻で笑いながら肩に置いた手で、後頭部を押さえた。
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