• テキストサイズ

咫尺天涯 ―遠い恋―【保科宗四郎】

第3章 触れた逆鱗


早く泣き止まないと…周りの人に変な目で見られてしまう。あ、お金……副隊長に"後で返すので、立て替えてください"とメッセージを送っておいた。

コンビニに寄ってから家に帰りお風呂に入って、飲み直すことにした。明日は普通に仕事だけど、飲まないとやってられない。

副隊長は私がお風呂から上がってからそんな経たずに帰ってきた。テーブルに準備しておいたお金を渡す。なんで受け取ってくれないの。というか、今日は帰って来ないかと思ったのに。

お互い何も喋らずに、私のお酒を飲む音だけが響く。突然、真っ暗になり、少し肩を跳ねさせた。副隊長の手が私の目を覆う。リップ音を立てて耳にキスをされた。

「泣いとるとこ、初めて見たかもしれん。……泣かせてごめん」

「泣いてません」

「え……ふっ、そうやな。汗やったかも」

耳たぶを食んで首筋に何度もキスをする。これ…するんだ。先程まであんな感じだったのに、もう副隊長の頭の中はソレしかないんだ。正直、全然そんな気分じゃないし、帰って来ないと思って解していない。

お酒を飲みながらボーッとしていた。副隊長はキスをするだけで、それ以上は何もしてこない。私が動くのを待っているのだろう。絆された熱が我慢出来なくなる時を。

「音芽のとこ行けばいいじゃないですか。……本命なんですよね?」

「ほんまにそう思ってるん?僕が付き合っとるのは、乃愛だけなんやけど」

付き合ってるとか関係ない。副隊長の気持ちがどこにあるかだ。でもどうせ、何も言わないんでしょ。新人の話に適当に合わせてただけ。

「同棲もしとるのに、なんで自分やと思わんの?さっき言うたやろ?僕はそういう男や」

ほら、変わってなんかいない。私の気持ちなんて、何も伝わってなんかいない。

「……好き」

呟いた声は、首筋を吸う副隊長のリップ音に掻き消された。初めてあなたが残した跡は、どれほどの想いが乗っているのだろう。
/ 80ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp