第3章 触れた逆鱗
「私が……私がなんの為に、あなたを必死に、死なせないようにしてると思ってるんですか。いつも必死に言葉を紡いでるのは、戦況の為なんかじゃありません」
なんで伝わってないの。いつも戦うあなたに届けてる声は……私だって、あなたの隣で戦いたかった。だけど、私にそんな力はないから…。
「私が好きになったのは、自分を貫いてみんなを救おうとする人です。私はその人を死なせない為に、緊迫した中で必死に考えてるんです。あなたの耳に届けてるんです。……死なないでって」
ずっと目を逸らさず、副隊長を睨んでいた。涙はとめどなく溢れているけど、拭う余裕すらなかった。未来は自分で決める。今をどう生きるかも、自分で考える。
私は今――この人に生きていて欲しい。死ぬ前提で生きないで欲しい。
私の想いは何も伝わってなんかいなかった。必死に副隊長の目を見るけど、副隊長は目を逸らす。どうして逃げるの?
「……宗四郎、私を見て…お願い……私を弱いって決めつけないで。強い私を見て」
思わず呼んでしまった名前は、どうしようもなく私の胸を締め付ける。私はあなたの下になんかいない。後ろにもいない。目の前にいるの。
「そんな宗四郎は嫌い。私が好きになった宗四郎じゃない」
口を固く閉じたままの副隊長は、ただジッとどこかを見ていた。どうして、届かないの……あなたがしてることは矛盾してるんだよ。嫉妬して欲しいなら、好きでいて欲しいなら、"軽い好き"でいろなんて言わないで。
店員さんが持ってきたお酒を一気に飲み干して、居酒屋を出た。新人のことを忘れていた。大丈夫だろうか……ごめん。