第3章 触れた逆鱗
終われるはずがない。もう少しちゃんと聞かなきゃ気が済まない。
「なんの為に、私に訪ねきた人たちをあなたで止めてるんですか」
「……なんで、第6でこういうのとか兄貴に可愛がられてる思うん?立川では全然やのに」
そんなの知るはずない。たまたま第6に、私を好いてくれる人がいただけじゃないの?そんなこと、いま関係ない。
「僕が君に誰も近付かれへんようにしとるからや」
なんでそんなことするの?副隊長の彼女はそこまでされるの?音芽にすればいいのに……わざわざどうでもいい私なんかにしないで欲しい。
張り付いた空気の中、副隊長はお酒をひと口、喉に流した。横目に見られて、心臓が跳ねる。仕草に色気を漂わせすぎ。こんな時に心臓が反応する。
「あ……保科副隊長、乃愛さんのこと、相当好きなんですね…?」
好きなんかじゃない。ただ、自分の思い通りにしたいだけでしょ。この人が好きなんて言うはずないじゃない。空気を良くしようと、新人の子が不穏な空気に油を注いだ。
「そやなかったら付き合ってへんやろ。いつ死ぬかわからんから、乃愛には軽い好きでいて欲しいだけや」
今なんて?いつ死ぬかわからない?そんなの、誰だってそうでしょ。"軽い好き"っていうのもよくわからない。一気にお酒を流し込んで、新しい物を注文した。
「先に死ぬんは僕や。そんなんわかりきっとるし。やから乃愛は、僕が死んだ後、楽に生きられるようせなあかんねん」
今、言っちゃいけないこと言った。副隊長は、死ぬつもりで私といるの?そうとしか思わせられない自分にも腹が立って、悔しくて……涙が零れてくる。
ぽろぽろと溢れてくる涙は止まらない。この人の前では泣きたくなかったのに。副隊長のことでこんな風になる自分を知られたくなかった。