第3章 触れた逆鱗
いきなり後ろから、私の身体を囲うように机に置かれた手に、心臓が跳ねた。この手、この匂い……いつの間に入ってきたの。オペレーションルームに入ってきたことに気付いていなかったので、自分があまりにも余裕がないことに気付いた。
いつまでも背中にある温かさに、バレてしまうのではと焦る。でも私のその焦りを嘲笑うかのように、頭に何かが乗った。恐らく、顎。隣で後輩が息を呑む。どうするの、これ……音芽のこと、どうするつもりなの…。
「あんなぁ、言いたいことがあるんやったら、ちゃんと言ってや。僕、バカやからわからへんねん」
「仕事中です」
「副隊長命令や。5分休憩。ちょっと来て」
副隊長命令はそういう風に使うものじゃない……溜め息を吐きながら少し椅子を後ろに引く。すると副隊長は離れて、私の手を引いてオペレーションルームを出ていく。
自販機の影に隠れて、唇を奪われた。頬を撫でて、何度もキスをしてくる。唇が離れる度に甘い声で、何度も私の名前を呟きながら。
「ごめん。泣きたいなら泣いて。やけど、泣くのは僕の前でだけや。次、他の男の前で泣いたら許さん」
あなたが原因なのに、なんでそんな偉そうなの。それをわかってて言ってるんじゃないの?そんなので泣くわけない。
私も浮気をした、だから責めるつもりはない。だけど、目の前であんな風に仲良くされると、さすがにきつい。
「自分には硬い鎧を着せてるのに、私のは脱がすんですね」
「ん、脱いで。僕も、少しずつ脱ぐから」
どうせ脱ぐ気はないくせに。だけど私は優しいから、少しだけ脱いであげる。
「……もっと、キスして__」