第3章 触れた逆鱗
「宗四郎。乃愛は泣かないって言ったけど、限界が来たら、そりゃあ泣くよ。しかも溜め込むタイプだしね。どうするの?あんたが必死に守ってるもん、本当は見当違いなんじゃない?」
音芽の言ってる意味がわからなかった。僕が守ってるものは――乃愛が壊れない未来。どうせ僕は乃愛より先に死ぬ。
だから、そんなに僕を好きになって欲しくなかった。でも、僕以外を見るのは許せない。距離を取ることであの子の未来を守れると思った。
"軽く付き合えるくらいの好き"、乃愛にはそんな風に僕を想って欲しかった。
「別に、間違ってへんし。……でも、今は泣かれたない」
僕が死んだ後、軽く泣いて立ち直れるくらいでいて欲しい。
追いかけたいけど、追いかけたらもっと僕を好きになってくれる気がした。だから、追いかけない。僕は最期まで、酷い男でいるつもりやから。
握った拳はギリギリと音を立てていた。足は今にも動き出しそうだけど、必死に抑える。兄貴になんべん抱かれても僕を好きな子や、抱き締めたいに決まっとる。
「宗四郎、恋愛下手すぎるでしょ。私は"乃愛を泣かせないで"って言ってるの。私が言えたことじゃないけどさ」
昨夜も乃愛を独りにした僕に、抱かれた女とは思えへん言葉やな。
結局僕は、音芽の横を通り過ぎて、オペレーションルームへと足を進めた。