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咫尺天涯 ―遠い恋―【保科宗四郎】

第2章 鏡の花、水面の月


頬を撫でられて顔を上げると、優しく唇が重なる。耳に近付き息をかけられた。

「もう僕も何も言わんから、乃愛も…兄貴のこと言わんで。やけど…最後に聞かして。兄貴の方がよかった?」

「……満たされているはずなのに、どこか…穴が空いているような気がしました」

抱き竦められて、息が詰まる。なんでこんなに、縋るような……肩に顔を埋めて、大きく息を吸われた。絶対、匂い嗅んだよね…?そのまま吐き出した息が肌を擽る。

「……戻ろか。腹減ってもうた」

機嫌、良くなった…?手を引かれてキッチンまで戻り、一緒にご飯を作った。副隊長はずっと笑顔で、なんだか…好きになった頃を思い出してしまう。

「あ、そうだ……私、第6の新人に狙われてるみたいで…」

「そやろなぁとは思っとった。やから、行かしたなかったんや」

立川で一度もそんなことはなかったのに、どうしてそう思っていたのだろう。首を傾げていると目の前に、サラダに入っているブロッコリーが差し出された。「好きやろ?」と笑う副隊長に頷いて口を開ける。

私が好きな物を覚えてる副隊長を不思議に思い、他にも好きな物を知ってるか聞いてみると、全て言い当てたので驚いた。私のことなんてどうでもいいんだろうと思ってたけど、そういうのは覚えててくれてるんだ。

つり上がった目尻が下がり、八重歯が光る。すごく機嫌良くなってる。その日、副隊長はお風呂に入り、自身の部屋に行くまでずっとニコニコしていた。
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