第2章 鏡の花、水面の月
「宗一郎さんはこんな無理やりしないっ!」
副隊長の手がピタッと止まった。私の胸の前でギリギリと音が鳴る程、拳を握り締める。
「……なんなん。僕は兄貴やないし、比べんなや。僕と兄貴はちゃうねん。なんでみんな比べたがるん?……欠陥品で悪かったな」
副隊長は静かに低い声を吐き出し、自身の部屋に消えていった。怒らせた……さすがにあんな言い方はなかったよね。副隊長は私と他の女を比べたりなんかしない。
それに、欠陥品ってなに……謝らないと。急いで副隊長の部屋に向かい、ノックして声をかける。返事は帰って来ない。こんなに怒らせたのは初めてかもしれない。どうやら私は、盛大に地雷を踏んでしまったらしい。
ドアノブを押す。鍵はかかっていなかった。「入ります」と声をかけて扉を開ける。だけどすぐに視界が奪われた。
「ええなんて言うてへん。やめてや…こんなかっこ悪い僕、君に見せたない」
「ごめんなさい…嫌なこと言ってしまいました。比べられるのって、嫌ですよね。すみません……宗四郎さんはいつもかっこいいですよ」
私の目元を押さえた副隊長の指に力が入る。手は取られて、部屋の中に引き込まれた。
「抱かへんから……抱き締めて。無理やりしようとして、ほんまにごめん」
私の知っている副隊長ではなかった。会ってない間に何かあった?そんなに宗一郎さんとしたことを気にしてる?
背中に手を回して、ぎゅっと抱き締める。バクバクと鳴る大きな音は――私のものなのか、副隊長のものなのか。