第2章 鏡の花、水面の月
その後から2ヶ月程経ち、私は立川に戻る。約3ヶ月の応援要請に応えた。その間、何度か宗一郎さんとは一緒の夜を過ごした。副隊長からは毎日のように連絡が着て、少し面倒臭くなっていた。別れ話は一度もされていない。
「乃愛ちゃん、いつでも連絡してな。寂しい言うたら、飛んで行ったる」
「ふふ、隊長が何言ってるんですか。お気持ちだけありがたく頂いときます」
飛行機に乗って、姫路を後にした。好きな気持ちは残ってるのに会いたくないって、しんどい。ご両親に会ったのも、副隊長には内緒にしていた。知ったら怒るんだろうな。結婚するつもりもないのに勝手に親に会われて……先に謝った方がいいかな?
空港に着いて、タクシーで立川に向かう。戻ったら――"痛いこと"をしなきゃいけないのかな。あんなに"痛くないこと"を知ったばかりなのに。
基地につき亜白隊長に報告してからオペレーションルームへ向かう。姫路で買ってきたお土産、みんな喜んでくれるかな。
みんなにはスイーツポテト。美味しいと言って食べてくれた。さて、執務室に行くか……何を言われるかわからない。メッセージは1日一度返したら、後は無視していた。
執務室まで来ると扉が開いていたので、そのまま扉をノックしながら声をかけた。副隊長一人か…まあ、副隊長専用のお土産があるから、一人の方がいいけど、怒鳴られたりしたらやだな。
「お疲れ様です。戻りました」
「……乃愛…なんで……あ、いや…おかえり」
副隊長は立ち上がり、近寄ってくる。頬に触れて顔を近付けてきたので、無意識に顔を逸らした。何故だろう…何故か、嫌だった。
「あ、あの…お土産です。これ、副隊長の物なので、家に帰ってから渡しますね。少し、食べますか?」
「食べる」
珈琲カステラ。珈琲が好きな副隊長なら、喜んでくれると思った。ひと口食べた副隊長は、美味いと笑う。よかった。