第2章 鏡の花、水面の月
好きな香りに似た匂いがして、その元に擦り寄る。ふわふわと何かが頬を擽った。目を開けると、白から紫のグラデーションが、目の前で緩く団子にされていた。
副隊長……じゃない。そもそもあの人が私の寝起きに、こんなとこにいるはずもない。
「よう眠れた?」
「はい……あの、すみません…」
ゆっくり離れて起き上がる。私昨日、なにしたっけ……自身の身体を見下ろして、服を着ていることに安心したが、隊服は着ていなかった。中のシャツと下着のみ。
「あぁ、すまん。寝苦しそうやったから、脱がせたわ。安心しぃや。寝とる子に手は出さん」
柔らかく笑う保科隊長を見て、ホッと胸を撫で下ろす。副隊長だったらたぶん、されてるかも…。
「ほんでさ……俺も今日、非番なんよな。昨日のこと覚えとる?……"痛くないこと"したい?」
どんどん顔が熱くなる。心臓が音を立てて暴れ出して、頭の中は慌てふためいていた。全部覚えている。変なことを言って号泣したのも、この人に散々甘えたのも。
そうだ、副隊長は…"君も遊んだらええで"と昔言っていた。許可は出てる。"痛くないこと"、私は知ってもいい。
「……してください」
メッセージの受信音が聞こえても、今は無視をした。