第2章 鏡の花、水面の月
寝てしまった乃愛ちゃんを背負って、基地に戻る。この子、相当飢えとるな。優しくされたら、コロッといってまうで、宗四郎。
ベッドに横にならせて離れようとすると、小指を握られた。小指て……どんな愛し方したらこんな、弱々しい甘え方なるん?
「乃愛ちゃん?……俺におって欲しいん?」
「いたくないこと、してほしいです…」
ちゃんと覚えとるんか。髪を撫でてからベッドの端に座ると、俺の腰に抱きついてくる。酔って、境界線わからなくなっとる。
「それは――素面の時に言い?そしたら、応えたる」
蕩けた瞳が俺を捉え、また目を瞑った。「絶対ですよ」と呟いて、規則正しい寝息を立て始めた。彼女の寝顔を見ていると、守りたくなる。弟の彼女やしなぁ…さすがにやばいか?
乃愛ちゃん、"別れる"とか言ってくれへんかな。宗四郎のこと捨てて、俺のとこ来たらええのに。二人がどういう付き合い方をしてるのかは知らないが、こんなボロボロで"好きなんて言われたことない"って泣いていたら、守りたくなるのも当たり前やろ。
布団を引っ張って、乃愛ちゃんの身体に掛ける。隊服を羽織るとぎゅっと握った。
ポケットからスマホを取り出し、乃愛ちゃんに向ける。泣いた跡を残しながら俺に縋って眠る彼女の写真を送られたら、あのバカはどんな反応をするだろう。
"乃愛ちゃん、もろてええ?"とメッセージを送ったあとに、写真を送った。すぐに既読がついて、思わず笑ってしまう。なかなか返信は来なかった。ブロックされてると思ってたけど、解除してたようだ。