• テキストサイズ

咫尺天涯 ―遠い恋―【保科宗四郎】

第1章 泡の飛沫


「小此木ちゃん、どやった?僕、頑張ったやろ?」

たぶん身体の関係はないと思うけど、あの二人は仲が良い。小此木が副隊長の彼女だと言われても、違和感はないだろう。

「そうですね、お疲れ様です。これ、お願いします」

「全然労ってへんで、それ」

小此木は副隊長に書類の束を差し出した。私はいつも、遠くからあなたを見ているだけ。どんなに目線を外しても、いつの間にか真ん中にいる。

腫れて膿を溜める傷んだ胸を無視して、数多の活字を相手に目を使うことにした。どこにも行き場のないこの想いは、どこに捨てればいい?燻ることもせず飲み込まれていく言葉は、深い海の底に沈んだ。

「今日、晩飯頼むで」

大量の書類を抱えた副隊長は私の横を通り過ぎて、オペレーションルームを出ていった。冷たい声を私の心に落として。

さすがに連日はないか…と活字との睨めっこの最中に考えていた。今日はスーパーに行かないと。
/ 80ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp