第1章 泡の飛沫
手を引かれて廊下を歩く。こんなところ誰かに見られたら……そんな心配をしていたが、誰ともすれ違うことはなかった。
誰もいない執務室に連れて来られて、扉を閉めた副隊長に唇を奪われる。基地内でこんなことをするなんて……今までほとんど接触はなかったのに。
「亜白隊長は元々知っとる。僕が言うた。付き合おうとるて…」
「え?……どうして教えてくれなかったんですか。どうしよう…って、ぐるぐる考えてたんですからね…」
副隊長は謝りながらまた口付けた。そもそも私は、"彼女です"って紹介してもらえる存在だったんだ。付き合いたての頃に報告したんだろうか…。
基地だからか、激しいキスはしない。唇が離れて額にも口付けられる。髪を撫でて離れていく手。
「昼……嫌やったら目ぇ瞑っとって」
どうして今日はこんなに優しいんだろう。この人はちゃんと、私が嫌だって思ってることを知っている。なのに…どうしてやめくれないの?胸がムカムカして、頭に血が登っていくのを、自分でもわかっていた。
「どうでもいいです」
「な……しおらしかったやん。なんで急に怒るん?」
ただ受け入れただけだ。私がしおらしいのはいつもなのだけど…痛みも全部受け入れて、あなたと一緒にいるのに。怒らせるあなたが悪い。