【チェンソーマン】先輩、私はそっちじゃない〈早川アキ〉
第2章 あなたの領域
早川先輩が「入ってきていいぞ」と言うので、私は立ち上がって先輩を見た。
「先輩……私、一人で入れません」
「は?」
先輩は距離が近い。
それは私を女として見ていないからなのか、そう見ないようにしてるだけなのか――この答えを聞けば、わかる気がした。
「自分で洗うの苦手で……」
「今までどうしてたんだよ…」
先輩は結局、「一人で入れ」と言った。
たぶん…私を女として見ないようにしている。
そう見てもいいのに……。
給湯器についているシャワーを手に取り、ゆっくり身体にかけていく。
右腕がズキズキと痛んだ。
一人で入れないというのも、間違いではなかった。
シャワーを肩にかけようと腕を上げたら、ズキッと強烈な痛みが走った。
大きな音を立ててシャワーヘッドが床に叩きつけられる。
「やば……」
すぐに屈んで、壊れていないか確認する。
お湯は普通に出ているので、壊れてはいなさそう。
傷が付いていないか、シャワーヘッドをじっくり見る。
「どうした」
先輩が声をかけると同時に扉を開く。
開けずに声をかけて欲しかった。
屈んだまま自身の身体を抱き締めると、シャワーが思わぬ方向に飛んでいき、気付いた時には、先輩の髪から雫が落ちる。
慌てて謝ったが、先輩は黙ったままだった。
それほど怒っているのだろうか…。
先輩は溜め息をついて、既に緩くなっているネクタイに指をかけた。