【チェンソーマン】先輩、私はそっちじゃない〈早川アキ〉
第2章 あなたの領域
廊下を真っ直ぐ進んでいくと、オレンジ色の光が差し込んでいた。
ベランダに繋がる大きな窓から夕日が見える。
何も考えずに私はベランダに出て、夕日を眺める。
西の空に沈んでいくそれは、月を照らそうとしていた。
背後でシャッとカーテンの開け閉めの音が聞こえ、反射的に振り向く。
リビングとは別の窓で、先輩がカーテンを開けていた。
慌てた様子でベランダに出てきて、着ていたジャケットを私の肩に掛けてくれた。
「なにしてんだ。
ほとんど裸だろ」
先輩は見るのに、他の誰かに見られるのはダメなのだろうか。
いや、確かに嫌だけど…先輩が気にすることではない。
優しいだけなのかな。
「すみません、夕日が綺麗だったので……」
「夕日よりも、お前の身体が綺麗だって思う奴もいるだろ」
少し首を傾げた。
遠回しでわからなかった。
夕日が綺麗だと思って見ていた私のように、私の身体を綺麗だと思って見る人がいると言いたいのだろう。
ひとつ確かなのは…先輩はそう思っていないということ。
リビングに戻って、先輩のジャケットを肩に掛けたまま、お風呂が沸くのを待っていた。