第5章 誰にも言えない甘い刻印
の身体が強張る。
腕の中にある彼女の背中が、再び小刻みに震え始めた。
彼女は轟の胸に顔を埋めたまま、頑なに口を閉ざす。
その沈黙は、単なる困惑ではなく、何か「触れてはいけないもの」を守ろうとする強い拒絶に見えた。
「……焦凍くんには、関係ないよ。ただの、変な夢を見ただけだから」
「関係なくない。お前があんなに怯えて、俺を拒絶してまで呼んだ男の名前だ。……今のこの状況で、ただの夢で済ませられるか」
轟の声に、苛立ちよりも深い焦燥が混じる。
自分の知らないところで、の心を支配している何者かがいる。
「言えないのか。……それとも、言いたくないのか」
「…………」
「……じゃあ、聞き方を変える。その『駆藤』っていうのは、お前が見て倒れたテレビの……あの男と関係があるのか。……それから」
轟は一旦言葉を切り、の肩を掴んで、無理やり自分の方を向かせた。
「……爆豪も、関係してるのか」
その瞬間、の身体が強張った。
「あいつの名前を聞くたびに、お前は俺の知らない誰かを見てるような顔をする。……その『駆藤』っていうのは、爆豪のことなのか?」
「……っ……」
「答えろ、!」
「言えない……言いたくないよ……何も知らない彼を、私の勝手な記憶に巻き込みたくない……っ」
「……『記憶』だと?」
轟の瞳に、鋭い光が宿る。
単なる夢や妄想ではない、もっと確信めいた響きを彼は聞き逃さなかった。
「……お前、前世とか、そういう話を信じてるのか。爆豪がその生まれ変わりだとでも言うつもりか?」
「……っ!」
が顔を伏せたことで、轟はそれが「正解」であることを確信した。
「……ふざけんな」
轟は低く、地を這うような声で吐き捨てた。
「あいつが誰の生まれ変わりだろうが、今、お前の隣にいて、お前を抱きしめてるのは俺だ。爆豪でも、その『駆藤』でもねえ!」
「……ん、……ぅ、んんッ……!」