第4章 剥落する日常、目覚める傷痕
が食い下がると、轟は一瞬だけ、痛みを堪えるように視線を逸らした。
けれどすぐに、いつもの揺るぎない眼差しでを見据える。
「……。お前は、俺を信じてるか」
「……っ、信じてる。信じてるけど、……無茶するのは、違うよ」
「……信じてるなら、今日はもう帰れ。俺は、俺がすべきことをするだけだ」
その言葉には、が踏み込むことを拒むような強い拒絶と、一方で彼女を巻き込みたくないという彼なりの不器用な優しさが混じっていた。
はぐらかされ、言葉を失う。
彼らの中には、自分のような普通科の人間には決して立ち入れない「戦場」があるのだ。
「……わかった。今日はもう帰るね。……でも、焦凍くん」
は病室を出る間際、振り返らずに告げた。
「……お願いだから、無理だけはしないで。死なないで……。……約束だよ」
背後から返事はなかった。
けれど、重い沈黙が、彼らの決意の固さを物語っていた。
夜の病院の外に出ると、夏の夜風がひどく冷たく感じられた。
は、轟たちが今まさに危険な深淵へ飛び込もうとしている予感に震えながら、一人、夜道へと消えていった。