第4章 剥落する日常、目覚める傷痕
駅へ向かう夜道、街灯が二人の影を長く伸ばす。
「……焦凍くん、あんな風に待ってたら勘違いされちゃうよ」
「勘違いじゃねえだろ。俺はお前に惚れてるって、もう言ったはずだ」
「それは……そうだけど……っ」
相変わらずの直球に、は俯いて歩幅を早める。
そんな彼女を気遣うように、轟は少し歩くスピードを緩めた。
「……明日から、林間学校の合宿だ。しばらく山に籠もることになる」
「あ……そっか。明日からなんだね」
の足が止まる。
毎日会えるわけではないけれど、連絡もつきにくくなる距離に彼が行ってしまうと思うと、急に夏の夜風が寂しく感じられた。
「……怪我、気をつけてね。焦凍くん、すぐ無茶するから」
「ああ。分かってる。お前の顔を思い出して、無茶しすぎないように気をつける。……帰ってきたら、またバイト先に顔を出していいか?」
「……うん。待ってるね」
家の前では精一杯の笑顔で、彼の背中を見送った。
「頑張ってね、焦凍くん!」
「ああ。……行ってくる」
振り返って小さく手を振った轟の表情は、夜の闇の中でも、以前よりずっと強く、頼もしく見えた。
けれど、この時の二人はまだ知らなかった。この合宿で、彼らを待ち受ける過酷な運命のことを。