第1章 灰色の雨と、血の誓い
謝りながら、は準備していたスポーツバッグを肩にかける。
轟はそれを受け取ろうと手を伸ばし、自然にの荷物を持った。
「焦凍くん、自分のもあるのに」
「いい。これくらい重くない。……それより、今日はあまり歩き回るなよ。人が多いから」
「わかってるって。……ねえ、焦凍くん」
靴を履きながら、は彼の背中に問いかける。
「……ん?」
「もし……もし、私が自分でもどうしようもないくらい、誰かを探してたら……焦凍くんは、怒る?」
轟は玄関のドアノブを掴んだまま、少しだけ動きを止めた。
彼はが時折、自分ではない「誰か」を遠い目で探していることを知っている。
幼馴染として、一番近くでその背中を見てきたから。
「……怒らない。だが」
轟は振り返り、少しだけ目を細めてを見つめた。
「俺がそいつより先に、お前を見つける。……それじゃダメか?」
「……ふふ、焦凍くんらしいね」
「今日、俺は勝つ。親父の力(左側)は使わねえが……それでも、圧倒的に一番を獲る」
その言葉の強さに、は目を丸くした。
轟はの方をまっすぐに向き直り、その細い肩に手を置く。
「だから……他の誰でもなく、俺だけを見てろ。……お前がずっと誰を探してるのかは知らないが、俺が勝つところを見れば、そんな不安も消してやれるはずだ」
「……焦凍くん」
「約束だぞ、」
それは、幼馴染という枠を超えようとする、彼なりの精一杯の独占欲だった。
は少しだけ心を揺らされながら、「うん、応援してるね」と微笑み返した。