第4章 剥落する日常、目覚める傷痕
それからの日々、轟は期末試験とさらなる訓練に向けて、かつてないほど多忙な毎日を送っていたが、どれほど忙しくても、彼はとの時間を疎かにしなかった。
「……ここ、公式の使い方が違うぞ。こうだ」
図書室の隅で、二人は肩を並べて勉強に励む。
轟の教え方は少し不器用だが、が理解できるまで根気強く付き合ってくれた。
「あ、本当だ。ありがとう、焦凍くん。……でも大丈夫? 訓練、毎日遅くまでやってて疲れてるんじゃ……?」
「問題ねえ。……お前とこうして座ってる時間が、一番の休息だ」
そんな甘い言葉を無自覚にこぼす彼に、は赤面しながらも、変わらない彼の熱量に救われていた。
またある日は、訓練で腕や足に擦り傷を作ってきた彼を、が甲斐甲斐しく手当することもあった。
「……もう、また怪我して。ヒーロー科なんだから仕方ないけど、気をつけてよ」
「……悪い。だが、お前に手当してもらえると思うと、つい少しだけ無理しちまうな」
「バカなこと言わないで!」
は呆れながらも、夢の中で見た記憶を振り払うように、丁寧に消毒し、包帯を巻いていく。
目の前で静かに自分の手当てを受ける少年の体温は、何よりも確かな「今」をに教えてくれた。
激動の職場体験を超え、二人の距離はより深く、より確かなものへと変わり始めていた。
期末試験という高い壁を乗り越え、世間は待望の夏休みに突入した。
ヒーロー科の面々は、夏休み返上でさらなる強化訓練や林間学校の準備に追われ過ごしている。
一方で、普通科に所属し、特に部活にも入っていないは、まさに「華の女子高生」らしい夏を謳歌していた。
「いらっしゃいませ! ……あ、焦凍くん!」
が夏休みから始めた駅前のコーヒーショップでのアルバイト。
夕暮れ時、店のドアベルがカランと鳴って入ってきたのは、汗の跡が残るTシャツ姿の轟、そしてその後ろに続く緑谷と飯田の三人だった。
「……。バイト、頑張ってるな」
「焦凍くん、それに緑谷くんに飯田くんも! みんな、どうしたの?」
「轟くんが、さんのバイト先がここだって言うから……。訓練帰り、ちょっと様子を見に行きたいって……あはは、僕らも着いてきちゃった」