第3章 黎明の夢、夕暮れの再会
駆藤は冷静だった。
リーダーとして、彼女の想いを受け止めつつも、自分たちの置かれた過酷な現状を誰よりも理解していた。
その「正しさ」が、今のみのりには何よりも残酷に響いた。
「……そんな理屈、聞き飽きました」
みのりは立ち上がり、ベッドの柵に手をかけ、彼を覗き込んだ。
その瞳には、かつてないほど苛烈な意志の光が宿っている。
「貴方が正しくあろうとするなら、私はどこまでも我儘になります」
みのりの手が、駆藤の顔を覆う酸素マスクへと伸びた。
「……何をする、みのり」
制止する声を無視して、彼女は迷いなくマスクを外した。
冷たい空気と共に、剥き出しの駆藤の息遣いが漏れる。
「――これは、私からの呪いです」
みのりはそのまま、駆藤の唇を塞いだ。
それは、慈しみというよりは、彼の魂に自分の存在を深く刻み込もうとするような、執念に近い口付けだった。
「……っ、……ん……」
駆藤の大きな身体が、驚きに僅かに強張る。
唇が離れると、みのりは彼の胸ぐらを掴んだまま、涙を流しながら笑った。
「勝手に死ぬことは、私が許しません。……必ず生きて、私の元に帰ってくると誓って。そうでないなら、私、貴方の目の前で死んでやりますから」
「……恐ろしい呪いだな」
駆藤は苦笑し、ようやく動くようになった左手で、みのりの涙をそっと拭った。
その手つきは、リーダーとしての怜悧さを失い、一人の男として、彼女の熱に侵されたことを認めるものだった。
「分かった。……誓おう。……お前を一人にしないために、俺は、泥水を啜ってでも生き長らえてやる」
夜明けの光が、二人の重なる影を白く照らし出していた。
これが、二人が「運命」という鎖で、より深く結ばれた瞬間だったーー。