第3章 黎明の夢、夕暮れの再会
「……大量出血だ。途中で意識を飛ばしやがった。おい、しっかりしろリーダー!」
「……っ、処置台へ! 早く!」
みのりは震える手で彼の傷口を圧迫した。
伝わってくるのは、意識を失い、死の淵へ片足を突っ込んでいる男の、あまりにも弱々しい鼓動。
「嘘……あんなに、あんなに動かないでって言ったのに……! 死なないで、駆藤さん、起きてよ!」
泣きじゃくりながらも、みのりの手は止まらなかった。
必死に応急処置を施し、すぐに手配した搬送車で病院へと運び込む。
数時間に及ぶ緊急オペ。
かつての仕事仲間たちが全力を尽くし、ようやく「峠は越えた」という言葉を聞いたとき、みのりはその場に座り込みそうになった。
「みのり、あとは私たちが診るわ。あなたは彼の側にいてあげて」
元同僚の看護師に肩を叩かれ、みのりは促されるままに特別病室へと入った。
酸素マスクをつけ、何本もの点滴に繋がれた駆藤は、驚くほど静かに眠っていた。
みのりはベッド脇の椅子に腰を下ろすと、彼の大きな、けれど今は氷のように冷たくなった右手を、両手で包み込むように握りしめた。
「……バカ、……本当に大バカ者ですよ、駆藤さん……」
ぽつりと、静かな病室に涙声が漏れる。
「与一さんを助けて、仲間を逃がして……どうしていつも、自分のことは後回しにするんですか。私が、どれだけ……」
あの日、彼に救われたときから。
彼にコートをかけられ、その手の温かさを知ったときから。
みのりの心は、もう自分だけのものではなくなっていた。
「行かせなきゃよかった……。私が、もっと強く引き止めていれば……」
後悔の言葉が溢れては、繋いだ手の甲に涙となって落ちていく。
みのりは一晩中、彼の呼吸が途切れないことを確かめるように、その手を一度も離さなかった。
窓の外が白み始め、夜明けの光が部屋に差し込むまで、彼女はただひたすらに、愛する男の「生」を祈り続けていた。