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愛を教えてくれた君と 【ヒロアカ R18】

第2章 硝煙の戦場と、夕暮れの公園


やがて、轟はゆっくりと腕の力を緩めた。
至近距離で見つめ合うオッドアイには、これまでに見たことがないほど濃い独占欲と、わずかな不安が混ざり合っている。


「……突然、悪かった」


轟の声は少し掠れていた。
彼はの肩に置いていた手を離すと、自嘲気味に口元を歪める。


「返事は、今すぐじゃなくていい。ゆっくり考えてくれ……。無理やり唇を奪ったことは謝る。……じゃあな」


それだけ言い残すと、彼は一度も振り返ることなく、足早に公園の出口へと向かっていった。
取り残されたは、ベンチに座り込んだまま動けない。
指先で、そっと自分の唇に触れる。
そこにはまだ、轟の熱が、感触が、痺れるような感覚となって残っていた。


(焦凍くん……。あんな顔、するなんて……)


頬が、一気に火照り出す。
幼馴染として過ごしてきた日々が、たった一つの口付けで音を立てて崩れ、塗り替えられていく。
は真っ赤になった顔を両手で覆い、熱が冷めないまま、逃げるように家へと帰った。





その夜。
轟から向けられた熱情に翻弄され、疲れ果てるようにして眠りについたは、またしても深い夢の淵へと沈んでいった。


それは、あの愛した人――駆藤と死別した後の、灰色に塗り潰された地獄の世界。

最愛の人を目の前で失い、その後の地獄の日々から命からがら逃げ出したみのりは、戦火の絶えない街を彷徨っていた。
冷たい雨が降り頻る中、力尽きて倒れ込んだ彼女の前に、一人の男が現れる。

誰かと重なる気配。
その男は、泥まみれのみのりを無言で抱き上げ、雨から守るように傘を差した。

(……あなたは……だれ……?)

夢の中の彼女が問いかけるが、男の顔は霧がかかったように見えない。
ただ、その男が発した言葉だけが、意識の底で不思議と鮮明に響いた。


『      』


その男の差し出した手は、今の轟の温もりに似ていたような、それとも……。






「……ん……」

夜が明ける直前、は微かな違和感と共に目を覚ました。
夢の中で自分を助けてくれた、あの男。
駆藤がいない世界で自分を支えてくれた、あの『誰か』

枕元に差し込む月光の下で、は昨日の轟のキスと、夢の中の男の気配の間で、言いようのない予感に震えていた。


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