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愛を教えてくれた君と 【ヒロアカ R18】

第2章 硝煙の戦場と、夕暮れの公園


「……何か、考え事か?」

「えっ? ……ううん、なんでもないよ。冷さんに会えてよかったなって思ってただけ」


は取り繕うように笑って、手を握り返す。
けれど、その微笑みがどこか遠いことに、轟の胸には微かな寂しさが募った。
どれだけ隣にいても、彼女の魂の半分は、まだ自分の手の届かない「過去」という深淵に沈んでいる。


「……昨日は、結局優勝できなかった。……親父への反発で、最後にあんな無様な負け方をした」

「焦凍くん、そんなこと……」

「だが」


焦凍はの手をさらに強く握り、彼女の言葉を遮った。
夕陽が彼のオッドアイを鋭く、そして熱く射抜く。


「俺は必ず、ヒーローになる。強くなって、お前の隣に立って……何があっても、お前を一生守り抜く」


「焦凍くん……?」

「。……これまでもそれらしいことは言ってきたが、改めて伝えさせてくれ」


轟が身を乗り出し、彼女の至近距離まで顔を近づける。
逃げ場のないほどまっすぐな瞳に、は呼吸を止めた。


「好きだ。幼馴染としてじゃなく、一人の男として……心から、お前を愛してる」


「っ……!」


驚きに目を見開いた瞬間、柔らかな感触が唇に落ちた。
それは、昨日の爆豪との一件を、そして彼女の中に潜む過去の亡霊を、すべて塗り潰そうとするような、熱く切実な口付けだった。


「……ん、……っ」


の思考が真っ白に染まる。
今まで何度もそれらしい言葉をかけられてきたけれど、こんなにも剥き出しの独占欲を向けられたのは初めてだった。

唇が離れると、轟はそのままを折れそうなほど強く抱きしめた。


「……過去の誰かじゃなくて、俺を見ろ」


耳元で、祈るような、あるいは呪いのような低い声が響く。
の背中に回された腕の強さに、彼がどれほどの覚悟で自分を求めているかが伝わってきた。
轟は、腕の中の彼女の温もりを確かめるように、さらに力を込める。


(たとえお前の心に誰がいようと構わない。……いつか、その記憶ごと、俺が奪い取ってやる)


夕暮れの公園で、轟は心の中で静かに、けれど苛烈なまでの誓いを立てていた。


一方、轟に唇を奪われ、そのまま強い力で抱きしめられたは、ただ石のように固まっていた。




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