第1章 灰色の雨と、血の誓い
一瞬の交錯。
前世の目の前で、駆藤の胸を黒い棘が深々と貫通していた。
時間が止まったような静寂の後、彼は糸が切れた人形のように崩れ落ちる。
「っ……いやあああああッ!!」
鎖を食い破るような勢いで駆け寄り、みのりは血溜まりの中に彼を抱き上げた。
温かかったはずの身体が、出血と雨でみるみるうちに冷えていく。
「嫌……嘘よ、目を開けて、駆藤くん! 置いていかないで……っ!」
「……みのり……。……怪我は、ないか……?」
死の淵にありながら、彼はまだ自分を案じている。
みのりは雨と涙でぐしゃぐしゃの顔を振り、彼の血に汚れた手を、自分の頬に添えた。
「ないよ、どこも痛くない……! だから、お願い、勝手に終わらせないで……っ」
「……すまない。約束……守れなかった……」
駆藤の瞳から、次第に光が奪われていく。
前世は彼の最期を悟り、溢れ出す涙を堪え、震える唇を彼の口元に寄せた。
これが、自分たちに許された最後の時間であるかのように。
「……待ってるから。何百年経っても、どんな姿になっても……私、絶対に駆藤くんを見つけるから」
重なる唇から、鉄の味が伝わる。
それが、駆藤がこの世で最後に感じた「愛」だった。
彼の腕から力が抜け、ーーストン、と床に落ちる。
彼女の悲しみに連動するかのように、雨脚が強くなる中、みのりは動かなくなった彼を抱きしめたまま、枯れた声でいつまでも彼の名前を呼び続けたーー。