第1章 灰色の雨と、血の誓い
天井が崩れ落ち、灰色の空から雨が降り注ぐ、廃墟の冷たいコンクリートの床に膝をつく。
自由を奪われたみのりの視界は、恐怖と屈辱で滲んでいた。
けれど、彼女の心を支配しているのは自分への憐れみではない。
ただひとり、ここへ向かっているであろう「彼」への祈りだけだった。
「……っ、駆藤くん……来ないで。お願い……っ」
震える声で呟いたその時、重厚な扉が無残に吹き飛んだ。
爆煙の向こうから現れたのは、誰よりも会いたくて、今この瞬間、世界で一番ここに来てほしくなかった人。
「……見つけたぞ、みのり」
駆藤の鋭い瞳が、痛々しい姿の彼女を捉える。
その瞳に一瞬だけ走った動揺を、みのりは見逃さなかった。
だからこそ、胸が張り裂けそうになる。
「……実に、美しい再会だ。だが駆藤、君の宝物は少し形が変わってしまったよ」
背後に立つ影――AFO (オール・フォー・ワン)が、みのりの細い肩にわざとらしく手を置いた。
みのりは嫌悪感に身体を強張らせ、唇を噛み締める。
「君を待つ間、彼女は実に健気に抵抗してくれた。……おかげでこちらも、存分に楽しませてもらったよ。君には勿体ないほど、素晴らしい身体だった」
「貴様……ッ!!」
駆藤の背後で、怒りの奔流が空気を震わせる。
みのりは、彼が自分を愛してくれているからこそ、その言葉がどれほど彼を傷つけ、焼いているかを知っていた。
「駆藤くん、聞かないで……! 私は、大丈夫だから……っ! だから、逃げて!」
みのりは必死に叫び、拘束を振り払おうと指先を血に染めて抗う。
彼女もまた、戦う意志を捨ててはいなかった。
愛する人の足枷になりたくない、その一心で。
しかし、絶望はあまりにも速く、鋭く彼らを貫いた。
「がっ……あ、……っ」
「……駆藤、くん……?」