第2章 硝煙の戦場と、夕暮れの公園
数時間後。
個室のベッドで眠る駆藤の傍らには、みのりが一人で座っていた。
ブルースは、リーダー不在の間、混乱するレジスタンスの指揮を執るために一時的にアジトへ戻っている。
窓の外が薄暗くなり始めた頃、ベッドの上で指先が微かに動いた。
「……っ、駆藤さん!?」
「……ここは……」
重い目蓋が開き、鋭い眼光がみのりを捉える。
彼は状況を把握するなり、すぐに身体を起こそうとして苦悶の表情を浮かべた。
「……ぐ、っ……」
「ダメです! まだ動いちゃ……!」
「……ブルースはどうした。……アジトが、狙われているはずだ。戻らなきゃ……ならん……」
傷口が開きそうな勢いでベッドから降りようとする彼に、みのりは両手でその肩を押し戻した。
「安静にしてください! 専門家として言います、今のあなたが行っても足手まといになるだけです!」
「どけ、看護師。……俺がいないと、あいつらは……」
「聞き分けのないこと言わないで!!」
みのりの怒鳴り声に、駆藤は毒気を抜かれたように動きを止めた。
みのりは肩で息をしながら、潤んだ瞳で彼を睨みつける。
「どうしても行くっていうなら……私も連れて行ってください」
「……正気か。あそこは戦場だ。無関係の女が来る場所じゃない」
「無関係じゃありません。レジスタンスの皆さんには、怪我の絶えない毎日でしょう? 専門の医療知識を持った人間が必要です。私が……私が、皆さんのケアをします。だから……」
みのりは彼の大きな手を、震えながらも力強く握りしめた。
「あなたを、一人で行かせたくないんです。……お願いします」
駆藤は、自分を真っ直ぐに見つめるみのりの瞳をじっと見つめ返した。
死線を潜り抜けてきた自分を前にして、一歩も引かないその意志の強さ。
「……俺の命を、勝手に背負うな」
「背負わせてください。……それが、今、私が決めたことですから」
沈黙が流れる。
やがて、駆藤は小さく溜息をつくと、握られた彼女の手を、少しだけ強く握り返した。
「……勝手にしろ。その代わり、死んでも文句を言うなよ」
「……はい!」
不器用な許可の言葉に、みのりは泣きそうな笑顔で頷いた。
これが、二人が地獄の戦場を共に歩み始めるきっかけとなった日の出来事だったーー。