第2章 硝煙の戦場と、夕暮れの公園
「ふざけないで!!」
彼女は涙をこぼしながら、彼に向かって叫んだ。
「あなたが死んだら、誰がこの人たちを導くの!? 自分の命を大したことないなんて言わないでよ! 私にとっては……私にとっては、命懸けで守ってくれた、たった一人のヒーローなんだから!」
泣きながら、怒りに任せて包帯をきつく巻くみのり。
その必死な、ぐしゃぐしゃの泣き顔。
駆藤は朦朧とする意識の中で、その顔に見覚えがあることに気づいた。
数日前、乱暴に服を剥ぎ取られかけながらも、自分を真っ直ぐに見つめてきたあの看護師。
「……あぁ。……あの時の、……泣き虫か」
駆藤の口元が、わずかに、本当にわずかに緩んだ。
「……治療、感謝する……」
駆藤の身体から力が抜け、彼はみのりの細い肩に預けられるようにして意識を失った。
「駆藤さん!? 駆藤さん! ……っ、絶対、死なせないんだから……!」
戦場の中心で、みのりは彼を抱きしめ、ただ必死にその心音を確認し続けていた。
「――誰か! 駆藤さんを、誰か助けて!」
意識を失った彼の重みを小さな肩で支えながら、みのりは瓦礫の隙間に向かって叫び続けていた。
やがて、瓦礫を退ける複数の足音が近づき、切羽詰まった男の声が響く。
「リーダー! どこだ、リーダー!」
「こっちです! 早く!」
駆けつけてきたのは、数人のレジスタンスの戦士たちだった。
先頭にいた、体格のいい男――ブルースが気を失う駆藤の姿を見て目を見開く。
「……リーダー!?……君が助けてくれたのか」
「応急処置は済みました。でも、内臓に達してるかもしれない……すぐ病院へ運んで、オペをしないと!」
「恩に着る、看護師さん。おい、担架だ! 急げ!」
ブルースは手際よく部下たちに指示を出し、駆藤を抱え上げた。
病院への道すがら、彼は前を見据えたままみのりに低く声をかけた。
「あんたがいてくれて助かった。あいつ、自分の命は二の次だからな……レジスタンスを救ってくれて、感謝する」
「……いいえ、お互い様です。…この前、彼には助けられたし……貴方たちは、私たちの希望ですから」
病院に到着するなり、みのりは休む間もなく緊急オペ室へと飛び込み、同僚や医師と共に、血に塗れた数時間を戦い抜き、ようやく止血と縫合を終えたのだった。