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愛を教えてくれた君と 【ヒロアカ R18】

第1章 灰色の雨と、血の誓い


静まり返った保健室。
カーテンが引かれた一角に、は静かに足を踏み入れた。

「……焦凍くん」

ベッドの上で、轟は静かに眠っていた。
自分が出した氷結の冷気に当てられたのか身体は冷え切っている。
はそっと彼の隣に座り、震える手でその頬に触れた。

「……頑張ったね。……お疲れ様」

轟の寝顔は、普段の険しさが消えて、どこか幼い頃の面影を残していた。
彼は今日、自分の過去と、父親と、そして何より自分自身と戦っていた。
その葛藤の末に、炎を消してしまった。
それが正しいことだったのかは、には分からない。
けれど、彼が必死に自分を見つけようとしていたことだけは、伝わっていた。

「…………か……?」

不意に、微かな声が漏れた。
轟が重い目蓋をゆっくりと開ける。
そのオッドアイが、潤んだ瞳のを捉えた。

「焦凍くん、起きたの? 気分はどう?」

「……負けた、のか。俺は」
「……うん」

轟は天井を見つめたまま、自嘲気味に息を吐いた。

「……最後、土壇場で親父の顔がよぎった。……まだ、完全に自分のもんにはできてねえみたいだ。あんな不完全な勝ち方……爆豪も納得しねえだろうな」

「そんなことないよ。焦凍くんがあそこで炎を出したのは、間違いなく自分の意志だった。それは見てて分かったよ」

は力なく腕を伸ばした轟の指先を、そっと握りしめた。
轟は彼女の温もりに安らぐように、少しだけ目を細める。

「……。俺はもっと強くならなきゃいけねえ。お前が、誰を探していても……お前が振り向いた時、俺が一番強い男であるために」

その言葉に、の心臓が冷たく跳ねた。
彼は気づいているのだ。
自分がどれだけ側にいても、の魂が自分ではない「誰か」の面影を追い続けていることに。

「……焦凍くん…」
「……少し、寝る」

繋いだ手に力を込め、轟は再び目を閉じた。
そのすぐ隣のベッドでは、まだ眠らされたままの爆豪がいる。
は二人を隔てるカーテンを見つめた。
前世で愛した人の魂を持つ爆豪と、今世で自分を必要としてくれる轟。

(……ごめんね、私だけが、全部覚えたままで…)

二人の少年の間で、の心はまだ、あの日見た灰色の空の下を彷徨っていた。



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