第1章 灰色の雨と、血の誓い
ついに、決勝戦のカードが決まる。
――轟焦凍 vs 爆豪勝己。
スタジアムの熱気は最高潮に達していた。
けれど、それを見守るの心は、千々に乱れていた。
(……どうして、この二人なんだろう)
今世で一番近くにいてくれた、大切な幼馴染。
前世で魂を誓い合い、死別した、愛しい人。
どちらかが勝てば、どちらかが傷つく。
二人が向かい合うフィールドは、まるで前世と今世が正面衝突する境界線のようだった。
「、そんなに震えてて大丈夫?」
隣で友達が心配そうに声をかけるが、返事をする余裕すらない。
(駆藤くん……もし今、あなたが私の隣にいたら、なんて言うかな)
視線の先、爆豪が不敵に笑い、掌で火花を散らす。
その向かい側で、轟が氷を纏い、静かに闘志を燃やしていた。
「……二人とも、頑張って。……でも、お願いだから、壊れないで」
凄まじい爆風と氷結の衝突により、スタジアム全体が真っ白な蒸気に包まれた。
「……焦凍くん……!」
は観客席で祈るようにその光景を見つめていた。
爆豪が執拗に「全力で来い」と煽り、緑谷の声援を受け、それに応えるように轟が左側の熱量を最大まで引き上げた瞬間、空気が歪むほどの熱気が観客席まで伝わってきた。
(お願い、二人とも無事でいて……!)
しかし、決着はあまりにも残酷だった。
最後の一撃が交差する直前、轟は何かを躊躇うように炎を消してしまったのだ。
爆豪の最大出力の爆撃をまともに受けた轟の身体が、氷の残骸を撒き散らしながら場外へと吹き飛ばされる。
「勝者……爆豪勝己!!」
勝利のアナウンスが流れる中、轟は動かない。
そして勝ったはずの爆豪もまた、納得のいかない結果に理性を失い、吠える獣のように轟へと詰め寄る。
それをミッドナイトの香りで無理やり眠らされるという、荒れた幕引き。
「……っ、ごめん、私ちょっと行ってくる!」
友人の呼びかけも待たず、はスタンドを飛び出した。
階段を駆け降り、向かった先は祖母のリカバリーガールのいる保健室。