• テキストサイズ

海に漂う星屑のように

第1章 大事な手紙


「ありがと」

不意に男が言った。

ん?何がだ?

一瞬何を言われてるかわからなかった。身体を起こして、そいつの顔を見ている。
そいつは、真っ直ぐ前を見ていた。
その目はやっぱりどこか、寂しそうだった。

「なにが?」
つい、言ってしまった。あ、こりゃまたきついお言葉が返ってくるぞと身構えたが、意外なことに、彼は少しトーンを落とした口調で言っただけだった。

「取ろうと・・・してくれた」
ポツリと言う。

そんなところから、ぽつりぽつりと、彼が話を始めた。

 最後の手紙って言ってたな
 うん
 家族のか?
 いや
 じゃあ、なんだ、その、好きな子、とかか?
・・・・・・・
 そう
 だったら、マジ好きだったんだな
・・・・・
 そう

ぽつり、ぽつりと積み重なる言葉。
そこには、深い想いが宿っている気がして。
なんだか、やっぱり俺は悪いことをした気がした。

「悪い・・・ことした。本当にすまん。」
「いいって・・・もう、大丈夫、だからっ・・・」

それは、全然、大丈夫そうではなかった。
たったひとりで雨の中、強がっている
そんなふうにしか見えなかった。

もう一回謝っても、意味ねえよな・・・。

そんなふうに思って、少し息をついた。
手の中の缶コーヒーはとうの昔に飲み終わってしまって、ただのひんやりとした金属の塊みたいになっている。

どうした・・・もんだろか・・・

俺が困っていると、男のほうが声を上げた。

「そんなに言うんだったら・・・さあ、
 今日、一日、俺に付き合ってよ」

そう言って、男はニヤリと笑った。

これが、俺、宗像師月と、
彼、佐倉陽菜多の長い長い一日の始まりだった。
/ 34ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp