第2章 赤レンガ倉庫
「食べないの?」
「もう・・・ギブアップだ」
「少食?」
「甘すぎる」
・・・・
「じゃあ、ちょうだい」
俺がいいともダメとも言う前に、陽菜多は俺の皿を自分の方に寄せ、あっという間に残ったパイを食べきってしまった。
「あーおいしかった」
そう言って、彼は窓の外を見る。そこからは外に据え付けられたテーブル席なんかが見えた。今日は2月の割にはあったかいからだろうか、そこで店からテイクアウトしたものを食べているカップルなんかもちらほらいた。
まだ口の中が甘ったるい気がした俺は、更にコーヒーを流し込んでいた。
これで、満足しただろうか?
ツミホロボシ・・・とか言っていたがなあ・・・。
窓の外を見ている陽菜多を何となくぼんやりと見ていた。
外の日差しに照らされた色素の薄い彼の顔は、そのまま陽光に溶けてしまいそうにも見えて、慌てて首を振る。
一体、こいつ、いくつなんだ?
背格好からして、大学生か、いってても24〜5ってところだろう。着てるものはシンプルだけど、それなりに金をかけている気がする。
顔立ちや皮膚の色だけ見ているとハーフかとも思うほどだが、その瞳は黒・・・ないしは深いブラウンだし、髪の毛も陽の光に当たると若干茶色かかって見えるけれども、日本人でもおかしくない黒色だった。
しっかしこいつ・・・まつ毛、なげーな・・・
まさか女性みたいにマスカラだの何だのってわけでもあるまいから、あれが天然なんだろうな・・・
「なに?」
不意に陽菜多がこっちを振り返ったものだから、じっと見ていたのがバレそうになり、慌てて目を逸らした。
「どうかした?」
「や・・・別に」
別に・・・である。
「そういやお前、仕事とか、学校とか・・・そういうのは?」
ちょっと空気を変えようと、違う話題を振ってみた。
「今日は休講」
休講ってことは、やっぱり大学生かなんかか。
いいな、大学生か。
俺自身も大卒だ。
まあ、それほどレベルの高い大学ってわけではないが、大学生活はそこそこ楽しかった記憶がある。あの頃は、バイトして、レポート書いて、サークル出て・・・
それで・・・恋をして
そういや、こいつを振った女ってのは一体どんなやつなんだろうな。