第5章 手のぬくもり
『どうしたんですか…その急に…』
「はは…分かんないんですよ。」
分かんないって…。
この人の頭のなかはどうなってるの?
『二宮さん?』
「メロンパン、嬉しかったです。」
自然な笑みを浮かべる二宮さん。
なんかドキッとしてしまった。
「一緒に食べません?」
『……は、はい。』
そう言いながらマンションの前で
二宮さんがメロンパンの袋を開ける。
「…はい、どうぞ?」
メロンパンの半分を貰い
一口食べるとなぜか微笑んでしまった。
「どうしました?」
『いや、あたし
二宮さんのこと謎な男の人だと思ってました。
だって…あんな変装してて…』
って、ん?
ん?だめじゃん!今がっつり二宮和也!
「へ~…そうなんですか。
ま、そうなりますわな…。ん?」
ん?じゃなくて!
そのとき、きっとマンションの住人
だと思われる人たちがあたしたちの
前を通った。
どうしよ…バレちゃう!
その瞬間、体が勝手に動いていて
二宮さんを抱き締めていた。
「…そう来ましたか…」
『はい?』
少し耳にかかる二宮さんの息に
ついドキッとしてしまう。
「知ってたんですよ。
人が来てるの。」
『え…じゃあ…』
「どうするかなって…?
そしたらこんな大胆な!」
そう言われると恥ずかしくなって
あたしが体を離そうとした。
「だめですよ~
まだ…だめ」
そう言って二宮さんは
あたしの体を強く抱き締め直した。
あたしの背中は心地よい
手のぬくもりで包まれていた。