第36章 あいさつ*nino*side
「母の恵です。
莉子 にはね、
事前に聞いてたのよ。
最初はびっくりしたけどね?」
莉子 …言っててくれたんだ。
本当に申し訳ないな…言わせるなんて。
「ほら、お父さん?」
そう言うと顔が真っ赤なお父さんが
ソファーからムクッと起きて俺を見る。
「父の…栄司です。
……莉子 を幸せにしてやってくれ…」
そう言うとまたバタンと倒れてしまった。
みんな笑ってるけど、
きっと、これがお父さんの最大の気持ちだよね。
「あ…弟の健斗です。
ま、姉ちゃんが幸せなら
別に何でもいいんで…はい。」
学生服を着てる弟くん。
幸せならって…きっと
幸せじゃないときがあったんだよな。
たぶんだけど晃さんの時とか?
「あの…僕…
こういう職業なんで、
きっと幸せにできないかもしれないです。
悲しませるかもしれないです。
辛いこともあるかもしれないんです。
でも、幸せにしたい。っていう
気持ちは強いんです。
気持ち…とかだけじゃダメってことは
充分わかってるんですけど…
本当に矛盾してるんですけど…
こんな僕でも幸せにしたい。て
言ってくれる彼女なんです。
こんな僕ですけど、大事な娘さんを
幸せにしたいと思っています。
僕に…娘さんをください。」
みんな怪訝な顔をしてる。
そうだよな。こんな挨拶の仕方って…