第2章 本当の私
目が覚めた。
どうやら眠っていたらしい。
昨日、あの後、自分がどうなったかを覚えていない。
もしかしたら気絶したのかもしれない。
しかし、今は布団に横になっている。
父が運んでくれたのだろうか?
太陽はもう高く昇っている。
(いけない、仕事をしなくちゃ)
急いで起き上がろうとしたが、その瞬間頭が酷く痛んだ。
「仕事はいいから今日は休んでいなさい。きっと疲れていたんだよ」
少し腰の曲がった母が言う。
お言葉に甘えて横にならせてもらう。
昨日、聞こえていた波の音はもう聞こえない。
いつもどおりの日だった。
いつもどおりの日は、その後も毎日続いた。
これと言って変わり映えのない日々。
だから気づかなかった。
『変わらない』という異変に。
友人と最後に会ってから半年後のことだった。
再び友人に会いに行った。
友人の変化はもう受け入れたので、ただ友人に会えるのを楽しみにしていた。
また前みたいに談笑できる幸せ。
そう、私が気にしなければ友人を失うことはない。
きっと友人も私を受け入れてくれる。
受け入れてくれている。
布団で寝ていた友人の子どもが泣いた。
「あぁ、お乳が欲しいのね」
友人は子どもに乳を飲ませ始めた。
胸に抱かれた子どもは満足気に乳を吸う。
なんと幸せな光景だろう。
しかし、何かがおかしい。
この子ども、半年前に見たときから成長していない。
前に来た時は生後3ヶ月程だったはず。
半年経てばもう随分大きくなって、起き上がって座ったり、遊んだりするものではないのか?
波の音は聞こえない。
ただドッドッドッと自分の血潮の音が耳に鳴り響いている。
「…そういえば、この子、何ヶ月になるんだっけ?」
友人に聞けば、
「もう3ヶ月になるんだよ、早いよねー」
と、にこやかに答える。
心臓が速く強く鳴り、喉がキュッと締まるような感覚がする。
顔色が悪くなっていたのだろう。
友人が「大丈夫?具合悪い?」と心配そうにのぞき込んできた。
「うん、大丈夫。けど、今日はもう帰るね。また、来てもいい?」
友人はいつでも来て良いと言った。
いつもどおりの優しい友人。