第2章 本当の私
嫁のもらい手がなくても、村の人たちに距離を取られても、何人かの友人との交流は続いていた。
友だちも嫁入りし、子どもが産まれ、なかなか会えなくなっていったけど、それでも本当にたまに都合が合ったときは会いに行っていた。
久しぶりに会う友人の雰囲気にどこか違和感を覚える。
表面上はにこやかに友人との会話を楽しみ、心の中ではどこだろう、なぜだろうと友人を注視する。
そして気づいた。
友の頭にこんなに白髪があっただろうか?
目尻にはこんなに皺はあっただろうか?
そんな私の心を見透かしたように友人が言う。
「貴女は全然変わらないね」
途端に目の前にいる人は本当に友人なのだろうか?と疑念が過ぎる。
急に波の音が聞こえた。
ざざん、ざざんと迫って来る。
私は急用を思い出したと嘘をついて、その場から逃げた。
走って走って家に向かう。
荒い息と速くなった鼓動で波の音をかき消す。
走って走って家の中に駆け込むと父と母は驚いた顔をして私を見た。
父の身体はこんなに細かっただろうか?
母の腰はこんなに曲がっていただろうか?
私は急いで水瓶の蓋を開ける。
中をのぞくと20年前と変わらぬ自分の顔が映った。
「どうしたの?」
と母が訊くので、
「私、私だけ、老けていないの…」
と言えば、
「お前はワダツミ様に愛されているから」
と父が返した。
血の気が引いていくのがわかった。
そして、取って代わるかのように耳の奥ではまた波の音が聞こえる。
これが愛だというのだろうか?
皆と歳を重ねられないことが?
一人取り残されることが?
これでは呪いではないか。
嫌だ。
置いていかないで。
私と同じ時を歩んで。
お願いだから。
混乱の最中、強くそう思った。
そう願ってしまった。
そして、私は初めて力を使った。