第11章 【脹相】君の名
「あの…簡単な物なのですが、出来上がりました」
比丘尼が気まずそうに声をかけてきた。
よくあんな重い話をしながら食事を作れたものだ。
(言ったのは俺だが…)
「…悠仁に声をかけてくる」
そう言って立ち上がったと同時に「なんかいい匂いする」と虎杖が部屋に入ってきた。
「食事ができたそうだ」
「マジで?食べたい」
虎杖は比丘尼のいる台所に行くと、「何か手伝うことある?」と話しかけていた。
(悠仁は気立てがいいな…さすが俺の弟…)
などと、脹相が一人で和んでいる間にも比丘尼の遠慮を押し切った虎杖が食事を手にしてやってきた。
食事はレトルトのカレーと手作りの味噌汁。
本当に簡単な物だが、今の東京の現状を考えれば十分な内容だった。
虎杖は椅子に座ると「いただきます」としっかり挨拶をしてから味噌汁を啜る。
「あ、うまい…」
虎杖が呟く。
脹相の前にも同じ物が置かれたので黙って味噌汁を口にする。
「…薄い」
だが、出汁が効いていて深みがある。
温かい食事が身に染みる。
「なんかじいちゃん思い出す。血圧高かったからやけに薄味でさ…」
虎杖は味噌汁に視線を注ぎながら話をする。
それだけできっともう故人なのだろうとわかる。
「そうでしたか。気に入っていただけましたか?」
「うん、これなら毎日食いたい」
比丘尼は優しく微笑む。
「ありがとうございます。悠仁さん」
「悠仁さんはやめて。悠仁でいいよ」
虎杖は困ったように笑った。
「いえ、それは…では、悠仁くん、でいかがでしょう」
「じゃあ、それで」
虎杖は出された食事をペロリとたいらげ、ご飯と味噌汁を2回おかわりしていた。
比丘尼はそれを少し目を見開いて眺めていた。
「今度から量を増やしますね」
比丘尼は虎杖に好きな物なども訊いたり、少しずつ会話が増えていく。
早くも馴染んできている。
(悠仁は人懐っこいな…さすが俺の弟…)
脹相は内心一人悦に浸りながら食事をとる。
とりながらふと気付く。