第9章 逃走と分与
朝、空が白む頃。
不意に今までのしかかっていたものが、消えた。
突然のことだったので、前のめりになって危うく転ぶところだった。
拒絶の代償が終わった。
きっと加茂の動きも再開しているだろう。
今いる場所があの寺からどの程度離れているかわからない。
安心せずに前に進む。
目指すは天元がいると思われる筵山麓。
今のところ、名前のみでどこにあるのかはわからない。
止まれば呪霊が近づいてくる。
人が多いところは呪霊も多いので街中に出ることも叶わない。
山道を選んで歩く。
たまに出会う人から筵山麓の情報を手早く聞く。
そんな旅路なので目的地に着くのに2週間以上かかってしまった。
辿り着いたところには鳥居が何基も並び、寺院のような建物が多く建つ場所だった。
1つ目の鳥居を潜った。
立ち止まって後ろを振り向く。
もう呪霊は追いかけてこない。
八重は天元の結界の中にいることを実感した。
いくつもの鳥居を潜りながら、階段を登り続けた。
たくさんの建物があるのに、人は一人もいない。
このたくさんの建物の中から天元を探さなければいけないのだろうか。
途方に暮れそうになったとき、前に見えていた建物の扉がゆっくりと開いた。
中からは誰も出てこない。
ただゆらゆらと扉が揺れている。
入っておいでというように。
「…天元様」
八重は開いた扉に近づいた。
中を覗くと真っ暗の空間に下り階段。
下の方が見えないくらい長く続いていた。
それでも、少しも怖くない。
どこか懐かしさまで感じる。
八重は一段一段降りていった。