第7章 加茂憲倫
そうして包み終えた時だった。
「やはり聡いな」
部屋の出口から声がした。
刹那の肌がゾクリと粟立つ。
そちらを振り向く。
「この短時間でよくそこまで行動できたな」
加茂が襖にもたれかかるようにしてこちらを見ている。
柔和な表情をしているが、その声はもう猫を撫でてはいない。
声が静かに牙を剥いている。
「一昨日まで息はあったんだよ?少し遅かったな」
(この男はこの子の死を悼まない…)
「ソレはもう少し研究したいから置いていってくれると助かる」
(この子たちに心を痛めない…)
「この子たちは連れていきます」
「君とはもう少し話をしたいんだ。留まってくれるといいんだが」
「嫌だと言ったら?」
加茂と話せば話すほど、胸の熱はこもり、頭は醒えていく。
加茂はやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。
そして、八重の問いには答えず口を開く。
「君は1年前からどこも変わらない」
「そこをどいてください」
加茂が一歩、八重に踏み出した。
「君は若く、美しく、そして聡い…」
「どいてください」
もう一歩、距離を詰めてくる。
「何百年前からそうしてきた?」
「どいて…」
もう一歩。
「お前、八百比丘尼なんだろう?」
その瞬間、八重の中で何かがプツリと切れた。