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【呪術廻戦】誰も知らない

第7章 加茂憲倫


「さて、あの娘の話だったね」

「はい、どこにおりますか?」

「あの娘の障りはかなり重くてね。こちらで預かっている間に9度も妊娠したんだ。その度に堕胎していて彼女は今、憔悴しているんだよ」

「では見舞わせてください」

「そんなに焦らずに、もう少し話をしよう」

「どうしてこの寺には呪霊は入ってこれないのに9度も懐妊したのですか?」

「そこが私も不思議に思っていたところでね。それを解明しないことには何も進まない」

「いいえ、他の術師に見せに行きます」

「あの母体は動かさない方がいい」

無表情に徹していた八重の眉がピクリと動く。

「どういう意味でしょう?」

「外に出して何が起こるかわからないし、何より私の興味がまだあの母体にある」

思わず眉に力が入る。

「先程から何故あの子を『母体』と呼ぶのですか?」

「これは失礼。9度も妊娠・堕胎に立ち会っていると孕む肉塊に思えてきてね…おっと、これも失言だね。忘れてくれ」

今のはもう確定的だ。
この男は異常だ。
そして、それ以上に危険だ。
ここに留まれば自分もどうなるかわからない。
八重は今にも逃げ出したい衝動に駆られる。
捕まれば何をされるかわからない。
手が震え、冷や汗が出る。
しかし、それを目の前の男に毛ほども気取られてはならない、足元を掬われる。
加茂と視線が交差する。
凍てつく時間が肌を刺す。

『助けて―――』

不意に声が聞こえた気がした。
八重はハッと耳を澄ませる。

「どうかしましたか?」

加茂が不思議そうに尋ねる。

「声が聞こえました、あの子の」

「そんなはずはない」

「どうして?」

「そうだな…今は眠っているから、かな?」

明らかに嘘だとわかりきっている。
加茂は怪しく笑う。
八重の反応を楽しんでいる。
八重は相手に伝わらないように深く息をして、意識してゆっくり吐く。
まずは落ち着かないと話にならない。
八重が一気に落ち着きを取り戻したのを感じたのか、加茂は「そうだ」と切り出した。

「まだお茶を出していなかったね。娘が起きるまで談笑しながら待ちましょう。私は貴女のこれまでの話が聞きたい」

そういうと部屋を出ていった。
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