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【呪術廻戦】誰も知らない

第7章 加茂憲倫


八重は一度町へ戻り、娘の母親に山向こうの寺に娘を預けたことを伝えた。
そしてまたいつもどおりの行脚を続けた。
そうして、1年越しの同じ季節が巡る頃、ふと「あの娘はどうしているだろう?」と思い出した。
気になった八重はかの町を再訪した。
こんなに短期間に同じ町を訪れるのは初めてのことである。
町に入ると出会う町人は皆が皆、口々に八重に礼を述べる。

「比丘尼様、その節はお世話になりました!」

「比丘尼様、あとで是非うちに寄ってください!」

最初に町へ来た時と比べて、かなり友好的になっている。
これは良い傾向だと思った。
そして、娘の屋敷に来た。
中に入ると町内とはうってかわって雰囲気が重い。
娘の母親が八重の存在に気がつくと駆け寄ってきた。

「娘はどうなりましたか?あれから帰ってこないのです。寺にも足を運びましたが会わせてもらえないのです」

母親の目から涙が流れる。
その姿が1年前の娘と重なる。

「どういうことですか?詳しくお話を聞かせてください」

母親の話では、娘は1ヶ月経っても2ヶ月経っても帰ってこないので3ヶ月になる頃に寺を訪ねたそうだ。
そうしたら、「娘さんの障りがひどいから」と会わせてもらえなかったという。
それから三月に一度は寺を訪ねた。
最後に訪ねた時は加茂に縋りついて少しでいいから会わせてほしいと懇願したそうだ。
それを加茂はひどく払い除けて、「あなたの娘はもういないものと思いなさい」と言われたのだと言う。

1年前の加茂のあの優しい態度からは想像もできなかった。
町の雰囲気からも想像しなかった。
町の人々は厄介払いを担った比丘尼として感謝していたに過ぎなかった。
1年前の加茂の仕草を鮮明に思い出す。
猫を撫でるような優しい声。
隠す口元。
細める瞳。
心臓がゾクリとした。
何が事実かはわからない。
自分の目で確かめに行かねば。
母親に自分は事情がわからないことを伝え、今から寺に行って話を聞いてくることを約束した。
そして、その言葉の通り、すぐに寺に向けて出発した。
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