第7章 加茂憲倫
八重と娘は応接間に通された。
僧侶は上座に座っている。
「私は加茂憲倫と申します。呪術師ではありますが、ここの寺を開いて呪霊関係で困っている人の手助けをしています。さて、早速そちらの娘さんの話を聞かせてください」
娘に代わって八重が事のあらましを説明する。
加茂は手を口に当てながら興味深そうに話を聞いている。
「今の比丘尼さんの話に間違いや付け加えはありますか?」
加茂が娘に優しく尋ねる。
娘は弱々しく首を振った。
「こちらの遺骸を見ても?」
今度は縦に振った。
包みは八重が丁寧に開けた。
中から出てきた物を見て、加茂の目が細められる。
相変わらず手で口元を押さえているため表情は読めない。
子を悼んでいるようにも見えるし、笑っているようにも見える。
この状況で笑う者などいないだろうと、八重は加茂が心を痛めているものだと思った。
「ありがとう。もう結構」
八重が再び丁寧に包み直す。
加茂は何やら熟考しているらしく、細められた瞳のまましばらく沈黙した。
どのような結論が出されるのか八重は固唾を飲んでその時を待つ。
「これは簡単にいかないかもしれません。しばらく娘さんをこちらで預かりましょう。ここの敷地には結界が張ってあるから呪霊は入ってこられないので安全でしょう」
その言葉を聞いて八重はほっと胸を撫で下ろした。
そして、娘の肩を優しく擦ってやった。
娘も涙を流して「ありがとうございます…ありがとうございます…」と何度も何度も繰り返していた。
「比丘尼さんは全国行脚の旅の途中なのですよね?娘さんの件はどのくらい時間がかかるかわからない。良くなったら私が町まで送り届けるから、貴女は修行の旅を続けなさい」
そんなことまで気を遣ってもらって、八重は本当に有り難い気持ちでその温情に甘えさせてもらうことにした。
最後に「必ず良くなると信じて、心を強く持ってくださいね」と娘に優しく声をかける。
娘は泣いてはいたが頷いて八重の瞳を見た。
その目には希望の光が差しているように見えた。