第6章 【脹相】手折る
しばらくはボードゲームに興じていた脹相は、いきなり弟たちが死に瀕する強烈な感覚に襲われた。
夏油たちの手前、平静を装ったのだが、さすがの夏油は脹相の機微を見逃さなかった。
何があったか尋ねられたので弟が死んだことのみ伝えた。
思わず力がこもってしまいボードゲームのコマを手折ってしまった。
真人からはコマを壊したことを責められた。
夏油は淡々とスマホをいじり、弟たちを殺した相手を突き止めた。
夏油も真人もどこか嬉しそうに笑っている。
誰も弟を悼まない。
(これが呪霊か…これが呪詛師か…)
気分が悪くなり黙って部屋を出る。
先程部屋を出る時のような茶々が入らなかったことだけは幸いだった。
本日2度目の外に出る。
先程出た時よりもだいぶ暗くなり、それなのに人通りは多くなったように感じる。
路地の陰になるところで座り込む。
(周りにはこんなに人間がいるのに、座り込んでいる奴がいても誰一人として気にしないんだな…)
大きく息を吸い、それを体内に留める。
そして、大きく吐き出す。
人間は冷たい。
呪霊も呪詛師も冷たい。
世界の全ては斯くも冷たい。
受肉してなお、脹相は寒くてしかたなかった。
しかし、その寒さを分かち合える兄弟は誰一人として残っていない。
(遂に俺一人か…)
もう守る者はいない。
あとは敵を取ることしかない。
その後はどうするのか。
どうでもいい。
それで自身が滅びようと、世界がどうなろうと、知ったこっちゃない。
そう思えるほど、今はただただ寒さがひどい。