第5章 対峙と邂逅
八重は縋り付く娘を支え、背中を擦りながら娘の母親に視線を送り退室を促した。
それに気づいた母親は一礼してから去っていった。
その後もしばらく娘は泣き続けた。
一頻り泣いた後、少し落ち着いたのか鼻を啜りながら話し始めた。
「私は身籠るようなことはしておりません。許嫁はおりましたが契ったことは一度もありませんでしたし、許嫁以外の男性とそのようなことはした覚えはないのです。懐妊したのに気づき、許嫁にはひどく罵られ破談になりました」
娘は再び鼻を啜る。
「胎子は十月十日は腹にいると言われておりますが、この子は三月で大きくなり産まれました。周りは隠していたのだと言いますが、本当に三月の間にみるみる腹が膨れていったのです。そして一昨日産まれました」
娘は腕の中の布に巻かれた塊に視線を落とす。
厳重に包まれたそれはもう生きていないことがわかる。
「その子は産まれた時は息があったのですか?」
「一度だけ…一度だけ、世にも恐ろしい産声をあげて息を引き取りました」
「そうでしたか…その子を見せていただいてもよろしいでしょうか?」
娘は頷くと包みを優しく床に置くとゆっくりと開けた。
中のものを見た八重は内心ハッとする。
表面的には眉が少し動いた程度だから娘には気づかれていないだろう。
開かれた包みの中にいたものは明らかに異形だった。
単なる奇形では済まされないほどの禍々しさ。
それは八重がよく目にしている呪霊に通づるものを感じた。
八重は何も言わず、ただ経を上げた。
経を上げている間にも娘はすすり泣いていた。